僕が旅を好きな理由(飛行機編)

飛行機の旅には列車の旅とも車の旅ともまた違う良さがありますね。それはなにより、同乗している全ての人達がこの1つの機体に命を預けている運命共同体なんだという事から始まるんだよね。飛び出したら最後、地上に無事降り着くまではみんなが運命共同体なんだよね。そういう連帯感が心の奥底に生まれるところから飛行機の旅は始まるんですよ。
 
だから飛行機でたまたま隣に座った人との関係とかって、明らかに電車やバスその他の乗り物でたまたま隣に座った人との関係とは全く違うんだよね。外国とかだと特にそうで、隣に座っただけでもうずーっと友達だったかのように話しはじめるからね。それもこれも、全て心の奥底で「我々は運命共同体である」って意識があるからなんだと思いますよ、僕は。
 
客席前のポケットに入れられてる機内誌、あれがまた良い。あれってなんかすごーく雑誌全体で大きな流れの編集になってて、作りがいわゆるそこらで売ってる週刊誌・月刊誌とは全然違うんだよね。いきなり「面白ーい!!」なんて記事は全然ないんだよね。だからと言って機内に本屋がある訳でもないし、他の雑誌とか買いにいけないじゃん。そうこうしている内に5時間〜6時間が過ぎて、やむをえず「うーん、ちょっと読んでみるか・・・」みたいな感じで目を通す。するとこれがまた面白い事を書いてあったりする。でもってまたちょっと寝たりして、2〜3時間後また「うーん、ちょっと読んでみるか・・・」ってな感じで読む。するとまた「なかなか良い事書いてあるなあ・・・」なんて楽しめる。そうこうしている内にいずれ目的地に着く頃には全部読んでる。そんな感じの編集になってるんだよね、絶対。
 
そもそも機内のみで読む事を前提にした雑誌でしょ(中には航空オタクとかで定期購読とかしてる人も居るんだろうけどね)、だからなんつーかすごく不思議なんだよね。すごい豪華な執筆陣だったりするんだけど、飛行機に乗る人以外が読む事はまずないっていう、実に不思議な空間というか読み手と書き手の関係だよね。「この連載面白いな」なんて思っても来月に旅がない限り、もう読む事はないんだよ。そういう意味でなんとも一期一会な読み物で、そこに妙な風情を感じるんだよね。
 
機内で上映される映画、あれもまた良い。無論、あの映画は眠たかったり他にやることがあったりすれば観ないじゃん、そこら辺の立ち位置が偉そうじゃなくて好きです。自分でお金を払って映画館で「さー観るか!」って感じとは全然違う、すごーく軽い立ち位置なんだよね。
 
そもそもなんで機内映画ってそんなに軽い立ち位置なのかって考えると、結局さあどんなにすごい映画とかやってもね、今現在空を飛んでいる自分達の方が全然すごいんですよ。だからどうにも盛り上がれないんだよね。
 
ちょっとしたアクション映画なんてやってもさあ、「どうせこれスタントマン使ってて、撮影終われば周りに沢山のスタッフがいて全然安全なんでしょ・・」って思うじゃん、SFとかでも「どうせ合成なんだろ」ってね。「俺達なんて今マジで空飛んでんだよ!!スタントじゃないよ!!これ墜落したら最後なんだよ!!」って思いがどっかにあるからさあ、なんとも作り物に対して盛り上がれないんですよ。
 
そういう意味ではなんかたまに旅行番組とかグルメ番組みたいな飛行機会社の特別プログラムがあるけど、ああいうのの方が共感するよね。今自分は空を飛んでるんだっていう少なからずの恐怖感を陸地での楽しみにすりかえて安らがせてくれるというね、あれ結構好きですよ、僕。
 
機内食もね、わりと好きですね。いつもなら絶対食べないデザートとかも飛行機の中だと「今食べとかないと、もし次の食事タイムの前にお腹空いちゃったらどうしよう・・・」なんて心配で食べたりする。思えば本気でお腹空いたらスチュワーデスになんか頼めばくれそうなもんだけど、やっぱちょっと「どうしよう・・」っていう不安感が食べさせてしまう。そこがいいですね。
 
まあ飛行機の旅っていうのは、言ってみれば良くも悪くも常に「大丈夫かな・・」っていう不安感が付きまとってる訳で、逆にそこがいつもと違う楽しさや連帯感を生んだりするんだと思うんだよね。きゃわいい女の子が隣に座ったりしたら、絶対恋に落ちると思うよ。「せっかく二人とも無事に目的地に着く事が出来たんですから、お祝いにお食事でもどうですか?」なんて感じでね。これ電車だったら言えない台詞だよ!!「無事に下北沢に着いたお祝いに、一緒に食事でもどうですか?」なんてさあ「素直にただのナンパですって言ったら?」って感じじゃん。
 
世界の国へと飛んで行こう!!という事でTO THE WORLD、全ては飛行機から始まるのだね。