蜘蛛

蜘蛛ってねえ、なんか優遇されてるよね、虫の中で。なんなんだろうね、絶対殺さないでしょ、家に居ても。言い伝えだかなんだか知らないが、とにかく家に居る蜘蛛って殺しちゃいけない事になってるよね。これって日本だけなのかな?それとも世界的にそうなんだろうか?
 
やっぱり僕も殺さないですよ、蜘蛛が居ても。なんか害虫を殺してくれる益虫っていうの?そんなんらしいという事もあったりなかったりで、とにかく殺さないですね。ただそんなこんなでホッタカラシにしておいたら、なんか最近家中を蜘蛛が我が物顔で闊歩(かっぽ)してるんですよ。「どうせ俺は殺されないんだもんねーー!!バーカ!!」みたいな顔して偉そうに歩いてんですよ、人の家の中を。まあ細かい表情はちゃんと見た事はないんだが、なんとなく歩き方とかがそんな感じをかもし出してる。
 
まあ蜘蛛の巣が家中にはり巡らされるみたいには氾濫してないんだが、なんか全然人間を警戒してる素振りがないんだよね、そこがムカつく。っつーか本当にこいつら害虫とか食べてくれてんのかな? あんまそういうお仕事中の姿を見た事ないんだよね、いつもなんかノラリクラリと歩き回ってるだけでさあ、全然仕事してる感じしないんだよね。
 
まあそんな蜘蛛でも別にリビングとかを散歩してるんならいいんだよ「おっ蜘蛛だ!ラッキー!!」くらいな感じで。でもやっぱ台所とかベッドの上とかに居られるとさあ、ちょっと嫌じゃない? やはりどんなに優遇されていようとも蜘蛛はしょせん蜘蛛なんですよ。ベッドルームの入室まで許可した覚えはないぞ!!と言いたいですね、蜘蛛さんには。
 
そもそも虫の世界だけじゃなく、生き物の世界って結局持ちつ持たれつじゃん、なんつーの食物連鎖って言うんですか? 別に蜘蛛だけが害虫を退治する良い虫って訳じゃなくて、みんながみんな、あいつがあいつを倒して、そいつを今度はこいつが食って、その糞が植物の飼料になって・・・みたいな感じでつながってる訳でしょ? でもそん中で妙に蜘蛛だけが良い仕事をしているかのようにとらわれているのはどうなんでしょうねえ?
 
よくよく考えると、世の中には言い伝えとかそんな感じの理由で、虫の世界における蜘蛛みたいに妙に人間から優遇されている物って結構あるよね。そいつらを全部まとめて『E指定(言い伝え指定)』としときましょうかね。例えば煙界ではさあ(ってそんな界隈自体ないと言えばないのだが・・・・)、あのお寺のお線香の煙だけE指定入ってんじゃん。大抵、世の中において煙っていうのはウザがられるものなんですよ、普通は。タバコの煙なんて今じゃまさに世の中で最も嫌われてるものの一つだし、焼肉の煙とかだってねえ、むしろ匂いだけで言ったら良い香りくらいなのに煙というだけでマジでウザイ扱いされてる訳でしょ。『無煙焼肉』なんて言って、出たそばから吸い取られちゃったりして。
 
そん中でなぜかお寺の線香の煙だけは妙にありがたい物になってる。みんな我れ先にと体に振りかけて喜んでる。これなんかまさにE指定だよね。だってもし全く逆の言い伝えで「お寺に供えられる線香の煙を体に浴びると、それだけ運勢を吸い取られる」なんてのがあったとしたら、きっとみんな絶対体に浴びないじゃない。言い伝えって結構大きいよね、正確な意味は分からないけど昔からそう言われてるから従いますみたいな。
 
あと『茶柱』、あれもまさしくE指定だね。お茶碗の中にちょっと立っただけで「やったぜ!茶柱たったぜ!!ナイスシュート!!」なんてみんな喜んでる訳ですが、あれだってねえ、基本的には入るべき物じゃないものが入っちゃっただけでしょ。飲みやすさで言ったら、そりゃーちゃんと濾(こ)してくれてたほうが良いに決まってる。言ってみりゃー本来捨てられるべき物ですよ。でもそれがちょっと残こっちゃって、しかも立っちゃったってだけでとつぜん立場がゴミから幸運を呼ぶアイテムに変わる訳ですよ。
 
そりゃーお茶っ葉にしてみれば許せないでしょ!!俺達が一生懸命おいしいお茶にしようとまさに自分の身から味を絞り出して、やっとの思いで1杯のお茶を完成させた所で、自分達はポイっと捨てられたのに対して、茶柱だけは大して味も出してないくせに突然「やったー、茶柱だ!良い事あるぞ!!」なんて褒められる訳ですよ、場合によっては丁寧に取り出して持って帰る人までいますよ。そりゃー俺がお茶っ葉だったら、マジで缶の中でそうとうイジメてると思うよ、茶柱を。「お前だけ可愛いがられてよー!ざけんなよーー!!」なんつー感じでね。
 
世の中のE指定な数々の事柄達は、そろそろ図に乗るな!!と言いたいですね。黒猫とかさあ、人の前歩くなっつーの!!(これは違うか・・・)