愛とサニーデイの夜(二夜目)

サニーデイサービス・ラストライブ2DAYS at 新宿リキッドルーム。僕は2日間とも行く事にしたんだけど、行く事にしたというより「行かなきゃ嘘だろ!!」って感じだったね、なんつーの?親族の結婚式とかさあ、そういうのって絶対行く訳じゃん、なんかそんな感じだったね。
 
初日、僕は異常に早くリキッドに着いてしまった。最近人に誘われてライブに行ってもまず頭からいるって事はなかったんだけど、この日はとにかく1曲目から、もっと言えば1曲目が始まる前の会場の空気から全てを体験しておきたいって気持ちがあって、それで早くに会場に行っていたのだね。そこで開演までの間知り合いと話したりしてて、わりと和やかムードだったんだけど、いざメンバーがステージに出てきて1曲目が始まった途端に僕は泣いてしまった。なんだろうねえ、ただ悲しいって訳でもないし、ただ嬉しいって事でもない、とにかく嬉しくて悲しくて切なくて、なぜか笑いながら涙が出てくるようなそんな感じだった。
 
3曲目まで、とにかく涙が止まらなかった。それはきっと「サニーデイが解散しちゃう!」っていう悲しさよりも、変わらないサニーデイが今目の前で演奏してるっていう安心感だったと思う。迷子の子供とかがさあ、親に会えた瞬間に泣き出したり(あるいは逆に親が泣き出したり)する事ってあるじゃん、あれってやっぱ会えたっていう安心感から泣き出す訳で、それは迷子になってる間に恐怖感とか不安から泣き出すのとは全く逆の涙だと思うんだよね。ライブが始まるまでファンの子達はみんな「サニーデイがいなくなっちゃう・・・」っていう不安な日々を過ごしてきた訳で、そこへ変わらないサニーデイがやってきて、変わらない演奏をした事になんかみんな安心して泣いていた気がする。
 
そしてアンコールとかでまたちょっと泣いてしまった。そこはもうなんというか、サニーデイを観ているというよりは、サニーデイとホフの歴史を観ているような感じに勝手になってて、思えば今俺がサニーデイのライブを観ているようにサニーデイが我々の武道館を観ていてくれたんだな、とかね。我々も武道館をやる時、周りから「これでホフ解散か?」みたいに言われてたりして、実際その後ソロをやったり個人的に半年も日本を離れたりする時期だったから、なんかあん時の自分がフィードバックしてきて、実に不思議な気持ちだった。
 
終演後楽屋でメンバーと話して「明日は雄飛君ダイブしてよ!」とかそんなバカ話しをわりと明るくしていたんだけど、本当にその日は上がれるのなら最後にまた同じステージに立ちたいなって思ってたよ。実際僕がサニーデイのステージに出た事は1回もないんだよね。だから最後の最後に客席から乱入してダイブでもしてやるぞ!!と思ったりしたが、そこは冷静に「それで怪我人でも出たら、マジでなんかサニーデイ・ラストライブで俺一人すっげー悪者になるじゃん!!」などと笑ってかわしていた。
 
2日目、正真正銘のサニーデイサービス・ラストライブ、なんか昨日観てしかも終演後に本人達に会ったりしてるもんだから、初日以上に複雑な気持ちで向かいました。
 
アンコールとの合間にビールを買いに行くと、そこにはたくさん知っている顔があって、なんかちょっとした同窓会みたいだった。別にサニーデイが解散する訳であって僕を含め観に来ている人達は何かが変わる訳でもないのに、なんとなく全員が何かからの卒業式のようなそんな感じだった。全然関係ないもん同志が「長い間お疲れ様でした」って挨拶始めそうな、そんな感じ。
 
そして遂に全部の曲が終わった時、とにかくメンバーみんないい顔してたなあ。観客もねえ、すごくいい顔してた。本人達はもちろんそうだろうけど、ファンの子達もみんな全部の力を使い果たしたような、良い意味での放心状態みたいだった。なかなかあんないいライブは体験出来ないと思うよ、これからも。会場が完全に一体化しているライブ、素晴らしかったです。
 
終演後、楽屋でメンバーに会ったけど前日以上にいい顔してたよ、そりゃー。特にMIDIの渡辺さんはねえ、なんかいつも以上に不思議な動きをしていて、それがまた笑えるんだよ(ってそれじゃ全然感動的じゃないなあ・・)。なんか締めの挨拶を渡辺さんがしたんだけど、なぜか喧嘩腰なんだよ。「皆さん、本当にありがとうございます・・・・いやマジで!!」とかって言っててなぜか口調が喧嘩腰なのね、あれ笑えたなあ。全然狙ってないんだよね、もう全然訳分らなかったんだろうね色んな感情が入り交じり過ぎて、それが喧嘩口調という妙な形で出てしまってるというね。なんか泣くのを必死でこらえる余り逆に怒り口調になっちゃったって感じ、笑えたけどちょっと感動的だった(良く言えばね)。
 
という事で、あの二夜は本当に愛と笑いの夜だったよ。僕はサニーデイサービスという素晴らしいバンドと同じ時をしかもすごく近い位置で過ごせた事を誇りに思ってるよ。でもこれからはサニーデイという一つの指標を失った事で僕らの作品にもなんらかの影響は出てくると思う。既に僕の中では「サニーデイがいなくなった分も次の作品ではすっげー事しないといけないな!!」って思ってるしね。余計なお世話だろうけどこれからはサニーデイの分もホフががんばらなくちゃいけないみたいな勝手な責任感が起きたんだよね、不思議な事に(そういう世代的な責任感から最も遠い存在だったのが僕という人間だったはずなのに・・・)。
 
な訳で鬚でも生やそうかなあ?曽我部君ばりに。 もし今後僕の歌詞の中に飲めもしないのに「コーヒー」とか乗りもしないのに「列車」とかそんな言葉が出てきたら「おや、サニーデイの穴をちゃんと埋めとるなあ・・・」と思って下さい。ってそういう事か???