あるラーメン好きとラーメン店長の話

ちょっと前の話になるが、横浜で有名なラーメン屋『吉村家』の社長が捕まった。この社長はラーメンでビルまで建てたというサクセスストーリーの持ち主で、ラーメン好きの間では知らない人は居ないっていう有名人だったんで、ラーメン好きの僕達(=僕とゲンショーさん)はかなり面白いニュースとして聞いていた。
 
この社長はラーメン屋の他に本屋(古本屋?)もやっていたらしく、その本屋で猥褻本、要するに無修正のポルノ雑誌を売っていたらしい(詳しい事は知らないが、まあ新聞によるとそんな感じらしい)。
 
そんな事件があった数カ月後、今度はラーメン王の名で有名だった石神君というラーメンマニアが捕まった。彼はラーメンマニアとして自分の本や雑誌での連載などかなり活躍していたラーメンっ子だった。このニュースももちろん僕達(=僕とゲンショーさん)はとても興味深く思っていた。
 
石神君はなんか酔っ払って一般の人に暴行を働いたらしいんだけど、その酔っ払い方が実にロックンロールで、ラーメン王という肩書きと妙にマッチしてんだかしてないんだか分らなくて、とてもオモロかった。
 
まあこの2つの事件について僕は詳しい事情を知らないので、事件そのものの罪の大きさなどはあんまり分らない。だからこの2人を責めるつもりもかばうつもりも全く無い。そしてこういう事件が起きたからといって、吉村家のラーメンは食べるべきじゃない!!とか、石神の本は買うべきじゃない!!などとは全然言うつもりはないんですよ。
 
僕にとってとても興味深かったのはラーメンというトピックスが、ここまでビッグになったのだなあという事なんですよ。だって石神君の事件なんてスポーツ新聞のトップ記事だよ!!それってすごいよね。言ってみれば只のラーメン好きですよ、この人は。町のラーメン好き兄ちゃんが酔っ払って喧嘩した、ただそれだけですよ。それがトップ記事になってしまう。吉村家の事件にしたって、ただのラーメン屋の親父ですよ、言ってみれば。そのおっさんがエロ本売ってたってねえ、別にニュースにするほどの事か?それだけ今ラーメンっていう物には話題性があるという事なんだろうね。
 
僕はラーメンを食べ歩くのが好きで、もちろん石神君の本も全部買ってたし、ラーメン特集番組なんかで吉村家の主人の事もよく知っていた。でも結局はただのラーメン好きの若者とラーメン屋の親父だった訳ですよ。逆に言えば彼らもこんなに有名にならなければエロ本売ろうが酔って喧嘩しようが、まさかそれを新聞で世間に公表される事なんてなかったんですよ。
 
僕はこの事件で石神氏も吉村氏も有名になるという事、自分の名前で世間に出るという事の大変さを知らされたのではないかと思うのだね。そりゃー有名になってチヤホヤされるというのは実に良い事だろうし、それでどんどん金が入ってくるんだからたまらないだろう。でも有名になるっていう事はそんなに甘い事だけじゃないんだよね。有名になるっていう事や、自分の名前で世間に出るっていう事は色んな意味で大変な事なんだというのをちゃんと自覚できてないと、なんかあった時に有名であるという事が逆に自分の首を絞めるような事になるんだよね。そういう意味でここ数年かなり右肩上がりで、なにかっつーとマスコミに登場したりしてちょっとウワっついてた感のあるラーメン業界にとって、今回の事件は良い教訓になったのではないかと思うのだねえ。
 
これは別にラーメン業界に限った事じゃなく、なんか世の中には『ちょっとした有名人』みたいな人達沢山いるじゃない。本業が芸能人とか芸能関係という訳でもなく、あくまで副業とか素人参加レベルでちょっと有名な人達(例えば、どっかの有名な美容師とかね)。言ってみれば石神氏も吉村氏もそういうちょっとした有名人の一人だったんですよ。そういう人達って一番楽なんだよね有名人としては。別に本当の芸能人みたく私生活まで制限される訳でもなく、街を歩く時にいちいちコソコソしなくちゃいけない訳でもない。でもちょっと顔が売れてて、知ってる人の間ではチヤホヤされるみたいな存在。マジでこれは一番オイシイ立場だと思うんだよね。
 
今回の事件っていうのは、そういうちょっとした有名人でも自分が望んで有名になった以上それなりの覚悟は必要なんだぞ!!という事件だと思うのですね(それが嫌だったら最初からメディアに出なきゃいいんだからね)。ラーメンは美味しいけど、有名になるっていうのはそんな美味しい事ばかりじゃないんだぞ!!という、ちょっと皮肉なお話なのですね、これはきっと。