TALK SHOW by Yuhi Komiyama

不健康自慢

眼鏡を初めて作ったのは99年に音楽活動を半年休んで海外に旅に行く事になった時で、海外で車を運転する時にやはり標識や看板がしっかり見えてないと危ないというので、当時視力0.8位だったんだけど念のために作ったという感じでした。
それが今ではどんどん悪くなって、多分今は0.1~0.3位なんじゃないかなと思います。

この間友達に「ちょっと眼鏡貸してよ」と言われて貸したところ、僕の眼鏡を試しにかけたそいつから
「これ全然、度入ってないじゃん!」
「こんなのダテだよ!」
「俺なんかもっとすげー目悪いよ!!」
と、なぜか攻められたのですが、僕に言わせれば「べつに俺は眼が悪い事を売りにしてないし、お前の方が眼が悪いならそれはそれでいいんじゃないの??」っていう、「そんな事言われても、、」状態だったんですよ。

たまにいるでしょ、そういう『不健康自慢』する人。

「俺は眼がほんとに悪い」とか「(肩が)ガチガチにこってる」とか「最近飲み過ぎてる」とか「全然寝てない」とか、そういう事言いたがるやつ。
ほんと、どうでもいいんだよね、キミが不健康だろうとなんだろうと、それを他人に自慢すんな!っつのね。

人の眼鏡をして「これは度が軽すぎる」ってねえ・・
最初からキミと眼鏡の『度』で競うつもりはないし、そもそも『度』を競ってどうするんだ!?
『度』で勝ったとして、なんなんだ??
それって眼が悪いってだけでしょ、それのどこがすごいのか全く分からない。

サラリーマンとかで『徹夜自慢』する人とかもね、ほんと不思議ですね。
忙しぶって「三日完徹(みっかかんてつ)だよ」とかね。だとして、それがなんなの?と思うんですよ。
いや、べつに頑張ってるなとは思いますよ、でも徹夜すんのが偉いっていうなら期末試験前の高校生とかみんな偉くなっちゃうからね。
そうなる前にやっとけよ!っていうだけの話でしょ。

そういう『不健康自慢』する人多いですよね。

僕、全然肩とかこらないんですけど、マッサージされる事自体は気持ち良いから、友達に「ちょっと肩揉んでよ」とか言うわけですよ普通に、そうすると「全然こってないじゃん!!」とか言われるんですが、最初から僕はこってるなんて一言も言ってない。
気持ち良いから「肩揉んで」って言ってるだけで「肩こってる」なんて一言も言ってないんですよ、それなのに「俺の方が絶対こってるよ」とか、また『(肩)こってる自慢』が始まる。

だからー!

僕は不健康じゃないんですよ、気持ちいいから肩揉んでって言ってるだけで、肩もこってないし、眼もそれほど悪くないし、徹夜もしてないし、全然『不健康』で誰かと争うつもりないんですよ。

この不健康自慢って、子供の頃から見てるテレビとか映画の影響だと思うんですよ。ヒーローが怪我を負いながら悪をやっつけたりね、主人公がなんらかのハンディキャップを背負いながらも努力して成功をつかむみたいのあるでしょ、スポ根の基本ですよね。

でもね、怪我を負ったヒーローが活躍する物語は、活躍するとこに意味があるんであって、怪我負ってることがすごいわけじゃないんですよね。(それはただの怪我人の物語でしょ)

徹夜でがんばるサラリーマンが最終的に成功するドラマとかも、成功するところの美学であって、単に徹夜がかっこいいわけじゃないでしょ。
それじゃストーリーにならないよね、最初から最後まで主人公が徹夜でがんばってるだけのドラマとか。

だから不健康自慢をする人っていうのは、ものの本質を全然見れてない人って気がするんですよ。
キミが今まで見てきた物語の『不健康』は単に設定の一つであって、それが主題じゃないんだよ!と。
それを勘違いしている。

不健康自慢の人って要は自分をアピールしたいわけですよね。
でも、せっかく自分という物語をアピールするんだったら、『不健康』なんていう途中のストーリーをアピールするんじゃなく、そんな不健康がきっかけでこんなすごい事件に巻き込まれましたとか、そんな不健康が原因でテロリストと戦うことになってギリギリのところで地球滅亡を阻止しましたとか、そのくらいストーリーを広げて宣伝してくれないと、誰も観にきてくれませんよ、キミが不健康なだけの映画なんて。

<2014年のあとがき>
40代になると、不思議と不健康自慢をする人が減ってきます。
本当の意味で不健康になってくるので、あえて不健康を誇張しようなんて思わなくなるからです。
そう考えると、やっぱり20代30代の不健康自慢って、実際は健康の証だったのかなと。

ちなみに諸先輩に聞くと、これが50代になってくると、むしろ不健康の話が会話の中心になってきて、自慢でもなんでもなくなるそうです。
さらに60代になると、またその逆で今度は「俺はまだこんなに元気だぞ!」と、健康を自慢するようになるそうです。

できればどの時代もニュートラルに健康でいたいものです。