我が心の恵比寿ラーメン2

恵比寿ラーメンに一体何が起きたのか?
 
ちょっと行っていない間に恵比寿ラーメンは、恵比寿にある『恵比寿ラーメン』と、六本木にある『元祖・恵比寿ラーメン』の2つに分かれてしまっていたのです!
 
ここからは僕も人から聞いた話なんで、曖昧ではありますが、どうやら店主の柴田さん(髭のおじさん)が奥さんと別れて、追い出されるような形で店を出てしまったようなのです。
そして男一匹で再び始めたのが六本木の『元祖・恵比寿ラーメン』であると。
しかも、この離婚にはどうもそれなりの理由があるというか、店主であるはずの旦那さんが逆に店を出る形になってる訳ですから、言わずもがなというか、それなりにすったもんだがあったんでしょう、きっと。
正確なことは知らないんで、あまり無責任には書けませんが、屋台から始めて、東京一と呼ばれるほどの行列のラ?メン屋になった、言わばラーメンドリームを叶えたお店ですから、それなりに波瀾万丈というか、様々な誘惑や甘い罠、利権問題、あるいは驕りや逆に焦りなんかもあったでしょう。
そういう中で夫婦仲がこじれたり、お店の権利に関する問題が勃発するのは想像に難くない訳です。
そんな訳で、恵比寿ラーメンはいつの間にか2つに分かれていたのです。
 
その後ラーメン好きの間では、やはり元の店主・柴田さんが始めた『元祖・恵比寿ラーメン』の方が美味しいということで、ラーメン本なんかにも六本木の店のみ載ってたんですね。
 
で、僕も当然食べに行った訳ですが、六本木の防衛庁横の路地にあったその店は、美味しい美味しくない以前に妙に裏寂しいんですよ。
メニューもそれまでやってなかった炒飯とかも始めていて、なんか往年の恵比寿ラーメンの『うまい醤油ラーメン一筋』みたいな感じがない。
味は変わってないと思うんだけど、僕が子供の頃に免許取りたての従兄弟の車に乗って夜中に行ったあの恵比寿ラーメンの輝きが全然ないんですよ!
来る人たちがみなそう思ってかどうか、お店はいつ行ってもガランとしてる。とにかく寂しいんだよね。
俺が胸を躍らせて行った、あの想い出の恵比寿ラーメンはどこへ行ってしまったのか??
 
なんか一つの大事な想い出を失った気分だったのです。
正直すごく悲しかった。。
 
そんな事もあり、すっかり六本木の恵比寿ラーメンから足が遠のいていたのですが、新たなラーメン本を読んでいたら今度はその元祖・恵比寿ラーメンが浅草に移転したと書いてある。
浅草といっても千束の方で、<恵比寿の表通り→六本木の裏路地→浅草の外れ>と、正直いって明らかにどんどん裏ぶれてしまってるんですよ。
ここまではっきりとした成功と転落を経験してるラーメン屋も珍しいんじゃないでしょうか。
 
しかし、僕はどうしてもまたあの想い出のラーメンを食べたくなって浅草までつい最近また行って来ました。
そして、数年ぶりにまた想い出のラーメンを食べました。
感想は六本木で食べた時と全く同じ。何かが足りない。。。
もしかしたら材料・作り方は昔と全く同じかもしれない、でも何かが足りないんですよ、あの頃僕が感じた胸躍る感じがない。
そして六本木の時と全く同じようにお店はガランとしてる。
 
ここまで追って来た自分がいけなかったのかもしれない。六本木の時点で、もう往年の恵比寿ラーメンのことは心の奥にしまっておけばよかったのかもしれない。でもどうしても食べたかったんですよ、もう1回あの味を。
 
正直、まだあきらめられてない自分がいるんです。
もう1回食べに行ったら、その時こそ美味しいんじゃないか?
もう一度恵比寿ラーメンが東京で一番うまいラーメン屋に戻る日が来るんじゃないか?
もう一度恵比寿ラーメンの前に行列ができる日が来るんじゃないか?
 
そんな想いに後ろ髪を引かれながら、浅草の街を後にした訳です。
 
後日、ここまで来たらやはり全てを見届け(食い届け?)なければいけないと思い、柴田さんのいなくなった恵比寿の恵比寿ラーメンに初めて行って来たのですが、こちらは全くもってひどい味でした。
同じ場所・同じ看板で営業してるっていうのに、こうも味が変わってしまうとは。
 
決して恵比寿ラーメンはなくなってしまった訳じゃないんです、恵比寿にはまだ昔と同じお店があるし、浅草には元祖を名乗る柴田さんもいる、しかしあの頃の恵比寿ラーメンは今この東京のどこにもない。
こんな寂しいことがありますか?
 
我が心の恵比寿ラーメンは、文字通り僕の心の中ではいまだに提灯が赤々としっかり輝いてるんだけどなあ。