巨大アナゴ

この間、ダウンタウンの番組の企画で東京湾に巨大アナゴを釣りに行くというのがあった。
なんでも最近東京湾で体長1mを超える巨大なアナゴが大発生してるというので、それを釣りに行こうという企画だった。
最初は普通のアナゴしか釣れなかったんだけど、時間が進むにつれて、本気で大きなアナゴが引っかかってきて、最終的にはマジでビックリするくらいの巨大アナゴが釣れて、番組的にはかなり面白い展開だった。 番組の最後にそのアナゴを焼いてみんなで食べていたけど、松っちゃん曰く相当「まずい」らしい。
それ以来僕はこの巨大アナゴの事がちょっと気になっていて、その後、他のニュース番組でもこの巨大アナゴに関するニュースをやっていたんで、それもしっかり見ました。
そのニュース番組によると、東京湾の巨大アナゴは最近「大発生」と言われて話題になっているけど、実は昔から東京湾では漁師の網にかかるもので、他の魚を食い荒らしてしまう迷惑な魚なんだそうだ。 釣り人達も、巨大アナゴは食べても美味しくないという理由で釣ってもリリースしてしまうので、結果巨大アナゴが増える一方で困っているという事です。
なんかこういうのって、ちょっとロマンがあるというか、東京湾で巨大なアナゴが他の魚を食い荒らす!とかって、ちょっと想像するだけでワクワクするじゃないですか。
グルメ番組なんかで普通の漁の映像はたまに見るし、いわゆるスポーツフィッシングの映像も釣り番組で見たりするけど、こういう化け物を捕まえに行く!みたいのはなんつーか、昔の水曜スペシャルの『川口宏探検隊』みたいで、大人になってもなんかワクワクするじゃないですか。
このニュース番組でも、やはり釣った大アナゴを料理して食べていたけど、焼いたものはやはりそんな美味しくないと言ってたけど、煮たのはわりと食べられると言ってましたね。

さて、話は変わって中目黒の安い寿司屋での話。
夜中に寿司が食べたくなって、中目黒のガード下にある安い寿司屋に入ったんですが。まあ、予想通りというかかなりいい加減な感じな訳ですよ。
まあ、深夜までやってる安い寿司屋に、こだわりを求めてもしょうがないんで、最初っからそんな期待はしてなかったんですが、それにしてもなんとも素人っぽいというか、ギコチない感じなんですよ。
一応『店長』と呼ばれる親方はいますが、その人もいかにも「お仕事」で握ってるって感じの人でね。なんか寿司を握るという事に対して、全然こだわりとか愛情を感じないんですよね。
こういう店によく居がちなんだけど「俺は本当だったらこんなとこで寿司を握ってる男じゃないんだぜ・・」みたいな、そういう人生の後悔みたいのを引きずってるというか、いかにも職業として今は寿司を握ってるだけって感じが出てるのね。安い寿司屋とか回転寿司とか行くと、ホントそういう人いますよね。
そういう人に限って妙にプライドが高いというか、客をなめてたりすんだよね、そして「銀座の寿司屋なんて高いだけだよ」とかこれまた妙に自分のとこより上の寿司屋に対して対抗心があったりする。弱い犬ほどよく吠えるなんていいますが、ホントそんな状態。とにかく俺は本当は大物なんだ!という妙な自信に満ちているんですよね。
とまあ、ここまで書くとなんかこの店の親方がかなり悪い人だったみたいだけど、べつにそんな悪かった訳じゃないですよ、僕が悪態つかれたとかそういう事もなかったし。ただ明らかにそういう感じなんですよ、感じがね。
そんなとこへ、常連らしき夫婦がやってきて、カウンターに座って寿司を食べながらその親方と色々話し始めたんですよ。 そしたらそのおばさんが例の巨大アナゴの話を始めたんですよ。「親方、知ってます?東京湾で巨大アナゴが大発生してるんだって!」なんて言い始めたんですよ。僕はオオー!!ってな感じですかさず耳を立てた訳です(こういう表現あるよね?ない?耳をそば立てるだっけ?まいいや) しかしね、このおばさんの言い方がちょっと違うというか、微妙に巨大アナゴは良いって感じになってるんですよ。いや、すごく微妙なんですが、このおばさんも巨大アナゴが海を荒らす困った魚で、食べても美味しくないっていう情報は知ってるみたいなんですよ。ただ伝え方が下手で、なんとなく巨大アナゴはすごい!みたいな微妙なラインで言っちゃってんのね。
そしてその話を聞いてる親方の方はというと、どうやらこの巨大アナゴに関して全然知らなかったみたいなんですよ。しかし先ほども書いたように、こういう場末の寿司屋の職人に多い妙なプライドがあるから、そこはそれ知ったかぶりしたい訳ですよ。
だからもう話がグチャグチャになってるんですよ、この二人の間で。
おばさんの方が「あれでしょ、親方、普通この店とかで使ってるアナゴって30cmとかその位でしょ? それがその巨大アナゴは1m位もあんのよ!すごいでしょ!」とか言ってんだけど、その言い方が微妙に「どうせ、あんたんとこのアナゴは30cm位しかないんでしょ!」って感じに聞こえる訳ですよ、もちろんおばさんはそういう風に言ってるつもりは全くないんだけどね。
それに対して親方の方がまた分ってないから、意地張っちゃって「いや、うちのだって結構大きいのありますよ」とかって巨大アナゴと大きさを競おうとしてる訳!!
この親方、巨大アナゴはまずいっていうのを知らないから、うちのアナゴの方が大きいぞ!みたく意地張ってる訳ですよ。
おばさんの方もこれはまずいと思って「いや、あれよホントすごい大きいのよ・・」なんて言ってるんだけど、それがまた言い方が微妙だから、すっかり親方はさらに挑戦と受け取ってて「いや、ホントうちにもかなり大きいの入る時ありますよ。脂なんかも乗ってるし、うちはアナゴは自信あるからねー!」なんて言ってまた意地張ってる訳ですよ。違うんだよ親方!!巨大アナゴ使ってちゃ駄目なんだっつーのにね!
もうメチャクチャでしょ。俺、笑いこらえるのに必死でね。巨大アナゴと大きさを競おうとしてる寿司職人ってね、すごいでしょ。
でもこん時、話し方ってホント重要だなって思いましたね。このおばさんは全くそんな悪気はなくて、ただ巨大アナゴの話を、話題としてふっただけなんだけど、その言い方が悪いからすっかり勘違いされちゃった訳ですよ。
また親方も親方で、変なプライドさえなければ「へー、そんなアナゴがいるんですか、すごいですね〜」で終わった話なんだけどね、知らないくせに意地張っちゃったから大変な事になっちゃった訳ですよ。うちのこそ巨大アナゴだ!!みたいにね。

ホント言い方・伝え方って重要だなと思いましたね。
でももしかして、本当にその店で巨大アナゴを使ってたんだとしたら、この会話全然間違ってないんですけどね・・・。むしろ巨大アナゴを使ってる事がバレたと思ってテンパっちゃってたとかね。「い、、いや、うちの方がデカイっすよ!!、、(あれ、ヤベ!俺なにバラしてんだよ、うちのが巨大アナゴだって・・)」みたいな感じでね。朝までやってる安い寿司屋ですから、あながちそんな事もありえるかもしれないですね。