禁断のロースカツ

先日目黒のとんかつ屋『とんき』で生まれて初めてロースカツを頼みました。このお店は子供の頃から何度も行っていて色々と想い出があります。
 
その昔僕がまだ小学校1年生位の時、家族で『とんき』に行って、カウンター席で僕がお味噌汁をこぼしてしまい、横のお客さんにもちょっとかかってしまったんですよ。そしたらその客のおばさんっつーのが実にこうグチグチと文句言うんですよ「クリーニングで落ちるかしら・・・ブツブツブツ」とかね。まあこぼしたのは俺なんでそれに関して言い訳もないし、もちろん謝ったんですけどね、ちょっと服にお味噌汁がかかった程度なのに実にグチグチ文句言うのね。で親が「すいません、クリーニング代お支払いしますから」とか謝っても、なんかグチグチ言ってる訳ですよ「クリーニングで落ちるかしら、、、ブツブツブツ」とね。
 
そんなこんなでブツブツ言われてたら、お店の女将さんがやって来て「すいませんでした、これはうちの店のカウンターが狭いのが原因ですから、クリーニング代はこちらがお払いします」って、その人のお勘定もただにした上にクリーニグ代まで払ってくれたんですよ!!
 
いや、マジでね飲食店の鏡だと思いますよこのお店の女将さんは。行列になってるお客さんの全ての注文を書かずに暗記する事でも有名だった女将さんなんですが、最近はお店では見かけなくなりましたが、相変わらず従業員さんみんなテキパキ働いてて本当に気持ちの良いお店です。そしてホントあん時はありがとうございましたと言いたいです。とまあそんなちょっと感動の話しもありつつ、話はつい最近のロースカツに移ります。
 
でね、そのとんかつ『とんき』でこの間ロースカツを生まれて初めて頼んだんですよ。俺ね、今まで絶対にヒレカツ派だったんですよ。よく通(つう)はロースカツを頼むなんて言いますけどね、俺やっぱ脂身に抵抗がありまして、100%ヒレカツしか頼んだ事なかったんですよ。
 
その日はね、ホントなんとなくですけどねロースカツってのも食ってみようかなと、そんな軽い気持ちでロースカツ道に足を踏み入れてしまったんですよ。
 
いやー、ホントビックリしましたね、ロースカツってもんに。あんなにいやらしい食べ物だとは思ってなかったですよ。なんなんですかねあのプルプルの脂身からしたたり出すジュルジュルの脂は、またそれが肉そのものから出る肉汁と相まってですね、いやらしいなんてもんじゃないですね。実に官能的というかね、ほんとエロスの世界でしたね、ロースカツってやつは。
 
今まで俺が揚げ物とは言えそこそこ爽やかなヒレカツを食べている横で、ロースを頼んだ人はこんないやらしいプルプルジュルジュルのエロスの塊を食べていたかと思うと、ほんとビックリですよ。
 
それからお店に入って来るお客さんを観察してたらですね、中年のカップルなんかが手をつないでやってきて「ロース2つとビールね!」なんてどんどんロースを注文してるんですよ、もうそれ聞いて俺なんか「よくそんないやらしい事大きな声で言えるね!」ってこっちが照れちゃってるんですよ。二人してこんなジュルジュルプルプルなの食べて、そんなに脂つけてこれからどこ行こうとしてんだよ!!ってね、もうこっちが赤面ですよ。あれはね、大人の食べ物ですねホント。若者があんなの食べたらニキビ出来ますよ、鼻血も出るだろうし。
 
という訳でこれでまた一つ大人の階段を登ってしまった俺なのでありましたが、ロースとヒレの間にこんなにも官能的な差があったって事を知ってビックリしましたね。
 
明日からとんかつ屋行ったらどっち頼むか悩むでしょうね、俺は。基本的に味的にはやっぱりヒレの方が好きですけどね、でもあのプルプルジュルジュルの脂身の世界を知ってしまったら、今後はちょっとヒレでは物足りないかもしれませんね。
 
なんかね、知ってはいけない快感を大人の女に教わってしまった中学生、そんな気分で僕はロースカツを初体験したのでありました。だからなんだと言われてしまえばそれまでなのですが・・・。