下北沢の秋風

僕は学校が小田急沿線にあったので、中学生位から友達とたむろすっていうと下北沢だったんですよ。家の地元という意味では原宿・青山・渋谷辺りでブラブラしてたけど、学校帰りなんかはいつも友達と下北沢に行ってたんだよね。中学3年の頃とかはそれこそ週の半分以上は下北に居たんじゃないかな?
 
でも学校を卒業して以来、すっかり下北沢からは足が遠のいてしまいましたけどね。思えばホフがデビュー前に下北沢にあったスリッツでやってた頃なんかは実際まだ学生でしたからね。なんか今考えると不思議だね。正式なプロではないにしろお客さんからお金取ってライブやってんだけど、実際はその沿線に通うただの大学生だったんだよね。
 
ほんでもって先日久しぶりに下北沢に昼間に行ったんですよ。そしたらね、なんつーか懐かしい学生の風が吹いてた訳ですよ。あそこはホント学生の街だね、風が違うんだよ、風が。なんかさあ吹いて来る風がね、学生時代にキャンパスで吹いてた風と一緒なんだよね、あるじゃんそういう風って。放課後の風というかね、文化祭の準備で遅くなった後の帰り道で吹いて来る風みたいの。そして実際、下北にはそんな学生達が沢山買い物とかしててね、なんかちょっとキュンとしたね。
 
この文章を読んでる現役の学生は毎日がそんな風だろうから、もしかしたらピンと来ないかもしんないけど、たぶん君たちにも俺の言いたい事はある程度伝わってるよね? 甘酸っぱいとかって表現を使うのも実に手抜きな気がしてしまうので他の言い方を使いたいのですが、あの爽やかでいながらどこか懐かしい様な空気っていうのは、きっと学生を卒業しちゃった大人が懐かしく感じるだけじゃなく、現役の学生の頃もやっぱり感じてたと思うんだよね。
 
そういう空気が今でも下北沢にはプンプンしてましたね。
 
原宿とか渋谷とかってやっぱり大人の街なんですよ。実は銀座とかより全然大人の街だと思うんですよ。っつーのはね、渋谷とか原宿って大人が子供に対して商売をしてる街でしょ、だから実はすごく大人が仕切ってる場所なんですよね。でも銀座とか新宿とかっていうのは大人が大人相手に商売してる街だから逆に大人が子供になれる場所なんですよね、同年代相手という意味で。ただ原宿とか渋谷っていうのはその点、お店サイドの大人とお客サイドの子供の区別がはっきりしてるから、実はすごく大人の街というか、大人は大人のまま、子供は買い物したら自宅に帰って行くっていう、ある意味すごくビジネスライクな街ですよね。
 
そういう意味で下北沢っていうのはすごく不思議な街で、もちろんお店とかをやってるのは大人なんだけど、立ち位置としては子供サイドに居る気がするんだよね。子供が子供相手にやってる街。だから子供に同化しちゃうとすごく気持ちがいい街なんだろうなって。なんかホント街がひとつの家みたいだよね、で、みんなそこの家の子供って感じ。
 
エレファント6の地元アセンズってやっぱりそんな街らしく、ほんと街中で普通にエレファント6界隈のミュージシャンに会ったり時にはR.E.Mのメンバーに出くわしたりする事もあるらしいんだけど、だから俺は勝手に日本のアセンズは下北沢だと思ってるんですよね(っつーか感覚的にはむしろ、アセンズがアメリカの下北沢くらいに思っている)。
 
そういう大袈裟に言ってみればコミューンに近い感覚の街って俺はすごく憧れがあって、とにかくこのコラムでも書いてる通り、僕は生まれた時からずっとこの原宿という、街全体がショーみたいな世界で育ってきたからね、近所付き合いもないし、1ヶ月で平気で新しいビルやら店やらがどんどん出来てはつぶれて行くような街だからね。そういうコミューン的な街とか思想ってすごく憧れるんだよね。
 
という訳で下北沢、久しぶりに行って惚れ直しましたね、実際問題。なんかあの街でしか出来ない音楽のイベントとかがまだまだある気がしましたね。久しぶりに下北辺りでフリースタイルしてみんのも良いかなと思ったりした訳です。