先日、『錦糸海苔(きんしのり)』という聞きなれない名前の海苔が送られて来ました。
錦糸海苔というのは一体どんな海苔かと言うと、ものすごく細く切られてる海苔の事なんですね。
ちらし寿司の上に卵焼きを細く切ったのを乗せるけど、あれ『錦糸卵』って言うでしょ、あれと一緒ですごく細く切られた海苔のことを『錦糸海苔』と言うらしいんですが、これは単なる商品名かもしれないので、詳しい事は分りません。
まあ、とにかくそんな、ものすごく細く切られた海苔が届いたんですよ。
家でザル蕎麦とか作る時に、海苔をはさみで切って細かくしたりするじゃないですか、それと基本的には一緒なんですが、その細さがまるで違うんですよ。1本1本が1mmも無い位なんですね。
わざわざ瓶に大層な感じで入れられてまして、正直最初は「べつに普通の海苔でいいじゃん、自分で切れば、、」とか思ってたんですが
瓶を開けてみたところ、フワーっと海苔の香りが立ってきたんですよ。
この時点で、こりゃーそんじょそこらの海苔とは訳が違うぞ!と。
で、御飯の上にかけてみたんですが、もうなんともルックスが全然違う訳ですよ、普通の海苔がペローンと1枚乗ってるのと。おそらく量的には同じ位かもしれないんですが、ふわふわっとご飯の上にそそり立って、とにかく全然違うのね、見た目から香りから。
で、一口食べてみたんですが、これがマジ最高!
実にふんわりしてて、口の中に海苔の香りがプワーン!って広がるのね。
なんかすごい贅沢してる感じなんだよね、使ってる量は海苔1枚か2枚くらいなんだろうけど。
やっぱり食べ物って本質だけじゃない所、つまり形状だったり使い方だったりで全然違うんだなって思いましたね。
だって、言ってみればただ細く切っただけですよ。ほんとそんだけなんだけど、今までの海苔と味わいが全然違う訳ですよ。
これは結構感動的な発見でしたね。
これを僕ら自身に置き換えてみると、本質的には全く同じ人間でも、ちょっとした工夫・ちょっとした変化で全く違う人間になれるという事なんですよ。
人間が本質的な部分で変わるっていうのは結構大変な事でしょ。
みんな「変わりたい」っていう気持ちは少なからず持ってると思うんですよ。
でも特にそれなりの年齢ともなると、なかなか今さら「変わる」ことって難しいでしょ。
自分では自分の良くない部分とか分かってても、なかなか変われない。
そこでこの『錦糸海苔』ですよ、その見事な変わりっぷり!
本質的な部分では全く変わってないですよ、ただの海苔ですよ。材料的な部分では全く普通の海草から出来てる海苔ですよ。
味だってキムチ味になったとか、胡麻油風味とか、ワサビ風味とか、そういうことは一切しておりません、単なる海苔です。
しかし、ものすごく細く切った。
ここが重要です!
ただ切っただけではありません、御自宅で素人が切れるような細さではありません。
『ものすごく』細く切った訳です。
それが、この劇的な変化を生んだのです!!
これってそれこそ簡単に出来そうで、実は出来ない変化なんだよね。
キムチ味・ワサビ風味、こういう事は簡単に考えつきます。そしてちょっと切ってみるというのもすぐ考えつくでしょう。
しかし「ものすごく細く切る」というのは意外に考えつかない、意外に難しい行為でもある訳です。
「変わりたい」と少しでも願ってる我々にとって、この「ものすごく細く」切ってみるというのはすごく重要なヒントになると思いますね。
本質まで変えようと苦労する必要もない。かといってその場しのぎ的な<キムチ味>みたいなイメチャンでもない。
ものすごく細く切ってみる。
この、ある意味すごく単純で、ある意味すごく度胸のいる行為を、僕らが自分達に置き換えて出来れば、おそらく周りがビックリするような「変化」をする事ができるんじゃないかなと。
ほんと、意外な所にまだまだ僕らが変われる『チャンス』がある気がしました。
<2014年のあとがき>
この文章に出てくる錦糸海苔というのは、京都<祇園むら田>の錦糸海苔です
今でもここの錦糸海苔やごまを愛用してます。
「ものすごく細かく切る」という行為は、意外と難しいことなんですが、ちょっとネタばらし的に最近のことでいうと、ライブで『スマイル』を演奏する際に、イントロから1回目のサビまでをホフの二人でアコースティックっぽく小さめに演奏して、次の間奏からバックバンド含めてドカっとバンドサウンドになるというアレンジを最近やってるのですが、それはまさに「ものすごく細かく切る」ようなことです。
曲調を完全に変えたり、テンポを変えたりとかは全くなく、ちょっとしたアレンジの変化なんですが、それだけで16年やってたスマイルがまた一気にドラマチックに聞こえるようになり、それによってバンドもまた新鮮に演奏できるようになった。
まだまだちょっとしたことで「変化」することができるんですね、実際。