小宮山雄飛

ホフディラン待望のニューアルバム『Island CD』のリリースを記念して、ワタナベイビーと小宮山雄飛のソロインタビューを敢行。
前作からアルバムに至るまでの道のり、それぞれの楽曲が生まれた日々の思い、ホフディラン&相方への愛と欲望をたっぷり語り尽くす!

作る自分とプロデューサー的な自分がいる

『花』はアルバムの中でも最後にできた曲だそうですが、これぞユウヒワールド!な名曲ですね。ラブソングであり、変わっていく時代を歌ったようでもあり…。

これも実は7年前に作った曲で、ずーっと隠してたんですよ。自分では聴ける状態だったので、自分の中でリリースされた感覚で満足していて。家ではずっと歌ったりもしていて、渡辺くんには本当に申し訳ないんですけど、僕と子供だけが知ってる曲だった(笑)。実は今回の収録曲も『病に臥して』以外は、ほとんどが7年前とかに作ったものなんです。これは僕の悪いクセなんですけど、この曲に限らず、自分がいろんな意味で納得した時でないと、曲を持っていけないんですね。仮に10曲作ったとしても、その中からこれなら出せるなって曲をやっと2曲ぐらい選んで、それに歌入れしたり何かして、ここまで来たら人に聴かせられるな…ってとこまで来て、初めて持っていくので毎回ギリギリになりがちで。本当に渡辺くんやスタッフには申し訳ないんですけど、でないと恥ずかしくて出せないんです。

それは単純にジャッジが厳しいという…?

良く言えば、作る自分とプロデューサー的な選ぶ自分がいて、アルバムの選曲の時は、作る自分がこの曲を歌いたいとか関係なく、プロデューサー的な自分が全体のバランスを見て、ここにこういう曲があったらいいなという視点で選んでる感じですね。

ホフディランとしては、昔からそういうスタイルで?

昔はこれほどではなかったんですけどね。ただ、渡辺くんと僕はそういう点でもすごく対照的で、渡辺くんは10曲書いたら10曲全部出すし、できれば10曲全部使ってほしいタイプ(笑)。

本当に真逆なのがおもしろい(笑)。ホフディランの二人の関係性や役割分担は、26年の中でなにか変化はありましたか?

どのバンドも良い時も悪い時もあるし、常に変わっていくものだと思うんですが、今は二人の役割がより明確になってきた気がします。具体的にいえば、レコーディングの現場のプロデュース的なことは僕がやるし、コーラスのアレンジは僕の曲も含めて、基本的には渡辺くんに全部任してます。アレンジも今回『スレンダーGF』だけは、渡辺くんの世界観に立ち入らず、渡辺くんの考える通りにやる方向にしたんですが、それ以外は渡辺くんの曲もドラムとか骨格だけが入った状態のものを僕が家で作ってくる感じ。昔みたいに全部をスタジオで一緒に作るというよりは、ここは僕、ここは渡辺くんって役割分担が明確になってきました。

お互い、それだけ任せ合えるというのは、やはり長年の信頼関係?

お互い年齢も重ねて、自分が何をやれて、何がやれないみたいなのがハッキリしてきたのも大きいですね。昔はなんでも半分半分で対等にしよう、みたいなのがあったんですけど、最近は無理にそうしなくてもいいやって。二人でラジオに出ても、渡辺くん喋りたがってるなーと思ったら、僕は喉が休まるからちょうどいいやって、ほとんど喋らないこともあるぐらい(笑)。そういう意味での競争心はなくなりましたね。

ベイビーさんにしても、ユウヒさんがそばにいるから、弾けられるところはあるんじゃないですか。

そうですね、渡辺くんの使い方はもう把握してるんで(笑)。ここは彼が出た方がいいけど、ここは任せてくれなきゃ困るわ!って、自分にないものを補い合ってる感じなんでしょうね。

新しい「無人島」時代とCDリスペクト!

『Island CD』というアルバムタイトルは、先ほどの無人島の話から生まれたものですよね。

そうですね。やっぱりコロナの隔離って孤島だなと思ったし、コロナ関係なく、今という時代もネット社会でリモートが普及して、みんなが社会の中でそれぞれの孤島にいるような状態だなとも思うし。逆の意味では、旅に出にくい今だからこそ、島というものにリゾートとか楽園みたいな夢を託したい気持ちもあったし。いろんなものが重なって「無人島」というテーマが浮かんできて。このアルバムの島は、誰かひとりのものなのか、あるいはホフディランの二人の島なのか、いろんな解釈があると思うんですけど、孤独も希望もいろんなものを詰め込んで、シムシティみたいに、さあ新しい時代の島をどう作ろうかなというイメージでした。

「CD」という言葉も、そのまんまCDですって意味もあるし、CDが元気だったひとつの時代の終わりと始まりを表すものでもあり、いろんな風に取れます。

『Washington,C.D.』からの流れもありつつ、今回タワーレコードから出せたということも含めて、ここで改めて、CDを推しておきたいなって。やっぱり、ホフディランがデビューした96年が日本のCD販売数のピークで、レコード屋でCDを買って聴くという文化や娯楽が元気だった時代だったし、ホフディランもCDが主戦場だった。僕自身、音楽を聴き始めた頃からずっとCDにお世話になってきたし、今まで本当にありがとうという感謝やリスペクトも込めつつ…ですよね。だから、今回のアルバムは曲の歌詞だけでなく、ジャケットやデザインも含めて、CDにリンクしたものを散りばめてるので、ぜひ発売日にタワレコに行って買って聴いてください(笑)。

パッケージも含めて、配信メインの今だからこそ稀有な、アルバムらしいアルバムだと思います。

結果的にすごくトータルアルバムになってますよね。S.E.で始まってS.E.で終わる構成とか、ジャケットとか、僕が日々SNSで書いてるようなことも含めて、トータルですごくリンクするものになってるし。初回限定盤に付属するDVDは、コロナ以降の配信ライブの集大成で、いま思えばあれこそが夢のようでもあり。もしコロナが収まって、リアルなライブがまた主流になって配信の方が廃れていったら、あんなのもあったねってなるかもしれないし。そこはわかんないけど、僕はこの時代の思い出として作れてよかったなと思うし、本当にいろんなものがリンクして詰まっているので、ぜひそれを紐解いてもらえれば嬉しいですね。

interview by Keiko Iguchi