Tシャツコミニケーション

7Gを立ち上げたこともあり、最近またTシャツというメディアに真剣に取り組もうと思ってるんだけど、これがやっぱ面白いんだよね。
7年前位にTシャツを作り始めた頃は、まだTシャツというもの自体がそこまで市民権を得てなかったというか、アメリカなんかに比べるとまだまだTシャツの立ち位置みたいのがはっきりしてなかったんですよね。
バンドTなんかでも「こんなの誰がいつ着るんだ??」みたいの平気であったしね(今でもそれはあるが)。
 
今でこそファッション誌では夏ともなればこぞってTシャツ特集なんかをやって、Tシャツ自体もロゴものとか、グラフィティー系、ROCK系とかって種類まで細分化されてますが、ここまでTシャツが市民権を得たのって実は結構最近だよね。
 
そんな訳で、むしろここ半年位は、街中にTシャツがあまりに氾濫し過ぎてることで、逆にちょっとTシャツから離れようと思ってたんだけど、ここへ来てやっぱりTシャツをもっと極めたいなっていう気持ちになってきました。
 
BEAMS Tへの参加や7Gの立ち上げで、Tシャツ作りのノウハウが前より分って来たっていうのが一番大きな理由だけど、それとはべつにTシャツってはっきりと世間に自分のデザイン・趣味・意見を発表出来るっていうのがでかいんだよね。
 
例えばCDだと、結局は買った人しか聴けないでしょ。
映画だって当然チケット買って映画館に入った人しか観れない。
 
でもTシャツは店先に飾ってあれば、誰でも見ることができるし、お客さんはそっから買う買わないを決めればいい。
逆にこちらサイドからしてみたら、世間の人に対して、その人が興味あるないに関わらず、オープンに意志を発表出来る場なんだよね。
 
同じ服でもワイシャツとかパンツとかって、やっぱり着て(履いて)生活して初めて良さが分るし、馴染んで来たりするけど、Tシャツはその点ダイレクトな訳ですよ。
お店で見て、デザインが良ければ買うし、そうじゃなきゃ買わない。
自分のデザインや意見・趣味をダイレクトに世間に提示してる感覚は、場合によってはCDとかよりもあるんだよね。
 
もちろん売り上げだけが全てじゃないけど、そういう意味でシビアなのがBEAMS Tで、僕を含めた色んなアーティストのTシャツが沢山飾られてて、その中でどれがどの位売れたかっていうのが、直接僕らにも伝わって来る。
CDとかと違って、レコ評みたいなもんがある訳でもないし、純粋に店頭で見て気に入ったものをみんな買ってくから、これはほんとにダイレクトであり、かなりシビアだよね。
自分的にはすごく気に入ったデザインのものが、数字ではあまり伸びなかったり。逆に軽い気持ちでデザインしたものがすごい人気で増版を繰り返したりとか、ホント読めないとこもやっててすごく面白い。
 
そういう意味で、Tシャツっていわゆる洋服としての役割以外に、作り手と着る側のせめぎ合いというか、駆け引きが存在すると思うんですよ。
作る側は単純に良いデザインって以上に着る側をビックリさせたいし、良い意味での裏切りとかも入れたい。それに対して着る側は着る側で新しいTシャツを見て「今度はこう来たか!」なんて思ったりする。
Tシャツという布で出来たメディアを通して、作り手と受け手がコミュニケーションを取ったり、ある時は戦ったり、ある時はパートナーになったり、そういうのがTシャツの醍醐味だと思うんですよ。
 
BANK$初代サポートドラムのツネちゃんとスタジオに入ってた時、ツネちゃんも自分でブランドをやってるから、いつも素敵なTシャツを着てくるんですよ。
ツネちゃんがスタジオ入りする度に僕が「それ、どこのですか?」とかって聞いて、まずTシャツチェックをするっていう。俺も俺で自分でデザインしたものとかすごく気に入ってるものを「これ、どうです?」って着てくから、毎日ちょっとしたTシャツ合戦みたくなっててね。
そのやりとりがすごく楽しくて。
それこそ「今日は、こんなの着てきたか!やられたー!!」みたいな感じで、相手のTシャツを見るのが楽しくてね。
ちなみにそんな中でウムだけは常にハスキンビーのTシャツだったのもオモロかったですが。
 
なんかね、Tシャツってそういうある種のコミュニケーションツールとして、作り手と受け手、あるいは受け手同士が対話出来るメディアだと思うんですよ。
その楽しさが分って来ると、デザインっていうプレッシャーから解放されて、もっとリラックスしてTシャツを作る事ができる。
 
そしてそういうリラックスして気軽に作ったものの方が、考えに考えて作ったものより実際人気があったりするから、ほんとTシャツ制作って奥が深いというか、飽きないとこですね。