我が心の恵比寿ラーメン

今日のラーメンブームが起こるずっと前、まだラーメン屋に行列ができるということ自体が珍しかった時代に、東京は渋谷区恵比寿に、今回のお話の中心となるラーメン屋・恵比寿ラーメンがありました。
僕にとって、この恵比寿ラーメンこそが心のベスト1ラーメンと呼ぶにふさわしい店です。
ご存知の通り、僕は生まれてからずっと原宿に住んでるので、恵比寿までは電車で二駅、自転車でも15分もあれば行けてしまう距離です。
しかし恵比寿ラーメンは夜しかやってなく、立ち食いスタイルで、とても子供が立ち寄れるような雰囲気ではなかった。
べつにガラが悪いとかそういう事ではないけど、近所の中華屋さんとは明らかに違う、大人のスペースとしてのラーメン屋の雰囲気がムンムンに漂ってた訳です。
まあそもそも小中学生がラーメン屋に一人で入ることもそんななかったし、昼ならまだしも夜しかやってないお店に子供だけで行けるはずもなかった訳です。
 
僕の家は従兄弟が下の階に住んでて、一番上の従兄弟が僕の6歳上、その下の従兄弟が4歳上、兄貴が2歳上にいて、僕は2歳間隔で離れてる4人兄弟の末っ子って感じで育ったんですね。
その兄弟・従兄弟達がそれぞれ18歳になって車の免許を取るたびに、夜にドライブに行くというのが恒例だったんですよ。
東京のド真ん中ですから、昼間は交通量が半端なくて、若葉マークの初心者はなかなかいきなり運転するのは勇気がいるわけです。
だから夜中にドライブに出て、運転の練習をする訳です。
で、そのドライブも一人だと不安だから従兄弟達が付き合って一緒に乗るというのがお決まりで、ただ家の周りをドライブするだけじゃつまらないんで、恵比寿ラーメンまで行って、ドライブに付き合ってくれた従兄弟達にラーメンをご馳走するというのが恒例行事だった訳です。
 
兄弟従兄弟がそれぞれ免許取り立ての時だけの行事なんで、ちょうど2年おきに、夜中の恵比寿ラーメンにみんなで行くっていう行事が行われてた訳です。
 
僕はそれが大好きで、末っ子である僕が18歳になって免許を取るまで、2年おきに恵比寿ラーメンに行っては、夜中の醤油ラーメンを楽しんでいました。
そして、その頃の恵比寿ラーメンは本当に美味しかった!
濃いめの醤油味にちぢれ麺、注文を受けてから切るチャーシュー、生姜が効いたワンタンも秀逸だった。
夜中に立ち食いという環境だけじゃなく、味そのものがちょっと大人っぽい昔の醤油ラーメンだったんですよ。
 
夜中に従兄弟同士で食べたっていう想い出も含めて、今でもその時の恵比寿ラーメンの味は舌にはっきり残ってますね。
たぶんあの味を超えるラーメンは僕の中では出て来ないでしょうね。
美味しいかどうかって問題じゃなくね、もう想い出の一部として、あれ以上の想い出を残せるラーメンは出て来ないだろうという。
 
そんな想い出の恵比寿ラーメンに数年前から異変が起きているというのです。
数年前といっても、もう10年近くなるでしょうか。
突如、恵比寿ラーメンは2つに分かれてしまったのです!
<以下つづく>