押し出し

作曲やデザインをしていて、どうにもアイデアが湧いてこない時ってあるんですよ。スランプと呼ぶかどうか分りませんが、丸1日全然いいアイデアが浮かばない時や、1週間・1ヶ月にわたってなんかこう新しいものが出て来ない時。
そういう時僕が心がけてんのが『押し出し』っていう方法ですね。
すごく単純な事ですけど、例えば良い曲が浮かばない時なんかは、一旦作るのはやめて、その代わりとにかくどんどんCDを聴くんですよ。それこそ1日中・1週間中、家ではステレオで、出かける時はi-podで、車ではカーステで、とにかく色んな人の色んな曲を聴くんですね。
昔好きだった曲から、全く知らないバンドの新しいCDまで、とにかく聴きまくるんですよ。気に入った曲なんかはそれこそ1日に何十回も繰り返して聴きますね。
そうやってどんどん聴いてくと、いずれ自分の中に色んなアイデアやメロディー・感情なんかが溜まってくるでしょ。そうすっと今度は自然と自分の中からそれらに押し出されるように曲やアイデアが出てくるんですよね。それがまさに『押し出し』。
要は、出てくるものがない時は、ひたすらこっちから入れて入れて入れて入れてやる、するといずれ反対側から押し出されて出て来るという。なんかウンチみたいで嫌ですが、まあ野球で言うところの満塁の状態に自分をする訳ですね。で、そっから先は押し出しで得点が入っていくみたいなね。
デザインなんかもそう、湧かなくなったらもうひたすら映画を観たり・美術館行ったり、とにかく自分の中にデザインを入れて行く。もちろんそれをそのまま出したらただのパクりなんでね、デザインを入れるって言ってもそっから受ける刺激を入れてくっていうのが正しい言い方かもしんないですけどね、とにかく新しい刺激やアイデアをどんどん入れてくと、いずれ反対側から自然と押し出されて新しいものが出て来るんですよ。
でもこの作業ってなんかね、すごく罪悪感との闘いというかね、自分でもそんなに納得いかない部分もある訳ですよ。言えば充電期間みたいなもんでしょ。作曲・デザインをしている時がアーティストとして最も働いてる時だとしたら、1日中CD聴いてるだけとか、1日中ビデオ観てるだけなんてね、やっぱりこう自分でも怠けてるという気がしちゃうんですよ。曲を作らなくちゃ行けない立場の人間が、他人の曲ばっか聴いててどうすんだよ!っていうツっこみを自分でしちゃうんですね。
でも、この『押し出し』っていう手法は実はアーティストとしては最も基本なんじゃないかなと思うんですよね。お笑いの人なんかでも、実際かなり色んなお笑いのビデオを観て研究してるしね。映画を嫌いな映画監督とか、CD嫌いなミュージシャンなんていない訳でね。みんなそれなりにどんどん自分の中に新しいものを入れて、そんで自分の中から押し出してるんですよね。 マジでウンチじゃないですけどね、人間って溜められる量が決まってると思うんですよ。だから入れてやれば絶対いずれは押し出されて出て来ると思うんだよね、単純な話。だからなんか冴えない時は、とにかく入れて入れて入れて・・・ってやってくといずれ自然と出て来るんじゃないかなと。
ただ、入れるものを的確に選ばないといけないと思うんですよ。やっぱり出したいものを的確に押し出してくれるものを入れてかないといけませんね。もちろん良い映画を観たから良い曲が生まれるとか、そういう事もあるから、必ずしも入れるものと出て来るものは同じではないですけどね、でもまあさすがに何かリンクしたもんじゃないと駄目だよね。
大体ね、こういう場合には食べ物とかは駄目ですね。美味しい食事をしたから良い曲が浮かんだ、なんて事は絶対起こらないですね。俺なんか美味しければ美味しいほどそこで満足しちゃうからね、「お腹いっぱい!ごちそうさまー!!」なんてすっかり御満悦してしまう。出て来るのは文字どおりウンチだけって事になってしまう・・・。
あと酒もね、完璧に駄目ね。美味しいお酒を自分の中にガンガン入れたから良い曲が押し出されて出て来たなんて事は、少なくとも僕の場合は起こり得ない。ただ単に酔いつぶれて次の日は憶えて無いっていう結果になるだけ・・・。
という訳で、飲食物以外のものを自分の中にどんどん入れて入れて入れて入れて・・・・そうやっていつか押し出されて来る。もっと能動的に言えばどんどん入れて入れて自分の中から押し出してやる。そうやって何かを産んでいくっていうのが、すごく大事なのだなと思ったり思わなかったり・・・(どっちだ!!)。