夏の香り

僕がタイの空港に着いた瞬間に思ったのは「嗚呼、夏の香りがするなあ、、、」という事でした。よくアメリカ人とかが日本に来ると空港に着いた瞬間から醤油の匂いがするとか、韓国行くとキムチの匂いがするとかいうけど、なんかそんな感じで僕がタイの空港に着いた瞬間に感じたのは「嗚呼、夏の香りがするなあ、、、」という事でした。
 
なんか最近夏の匂いって少なくなった気がするんだよね、特に東京では。僕が子供の頃は夏休みってすごい夏の香りがしてた気がするんだよね。特別なにかの香りという訳じゃないんだけどね、気温だったり、微妙な湿気だったり、そういう温度による木の匂いみたいのだったり、あるいはコンクリートが熱せられてる匂いだったり。なんかそういうのを全部含めて夏の香りがしてた気がするんだよね。
 
最近あんまり夏の香りがしないのは、都会の環境の変化かもしれないし、僕自身が大人になって夏らしい生活を送らなくなってきたからあまり感じないだけかもしれないけど、とにかくなんか夏独特の湿った、でも決して陰湿な感じではない、なんというか懐かしい香りというのがしなくなってる気がする。もしかしたら田舎とかに行ったら今だにしっかり夏の香りというのがあるかもしれないけど、とにかくここ東京ではあまり夏の香りというのを感じなくなったね。
 
でもってタイにはそんな夏の香りが、もう空港の時点でかなり漂ってたんだよね。空港なんて木々がある訳でもないし、冷房だって効いてる訳だからそんなに夏々してないんだけど、それでも充分夏の香りというのがしました。なんか空港に着いた時点ですごくこう懐かしい感じがした。僕はかなり小さい頃にタイに行った事があって、そん時もたしか時期的に同じ頃だったからそれも一つの要素だったかもしれないけど、とにかくなんかすごく懐かしい感じがしました。「嗚呼、あの夏に帰って来たんだなあ、、、」っていう。
 
話はそれるが、俺の学生時代の遊び友達って、まあなんつーか中途半端な遊び友達じゃなかったから、けっこう多くのやつがいわゆるヒッピーみたくなって、今だに1年の半分はタイかインドに居るみたいな生活をしてるやつが多くて、俺的にはタイとかインドってそういう意味でなんか特別な思い入れがあって。友達達が行ってしまった場所というか、そん時遊んでた仲間は東京に残ったグループとインドへ行ってしまったグループに大きく2つに別れたみたいな状況だったんだよね、まあ俺はご存知の通り東京に残ってホフディランとしてデビューした訳だけど、あん時そいつらと一緒にインドなりここタイなりに行っていたらまた全然違う世界だったんだろうなあと思うと、やっぱタイやインドにはちょっとした思い入れがあるんだよね。
 
そういう思い入れのあるタイで、すごく夏の香りを感じた時に、なんか良い意味ですごく元々の自分に戻った感じがあったんだよね。小学生の頃に感じた夏の香りや、インドへ行ってしまった友達と過ごした最後の夜の香りや、なんかそういうのがすごくフラッシュバックしてきた。
 
人には誰でも忘れられない夏の香りというのがあると思うんだよね、まあ中学生とか高校生で今この文章を読んでる人は、今まさにそういう夏の真っ最中かもしれないけど(もちろんこの文章を読んでいるのが夏であればの話だが、、、、)、若い頃の想い出として「あの夏、、、」って絶対あると思うんだよね。だから人はなぜか夏を語る時にかならず「あの夏」って「あの」を付けるでしょ(あるいは「その」とかね)。別に特定の夏を語ってる訳じゃなくても、なんかついつい「あの夏」って表現がしっくり来てしまう。これが春だとこうは行かない、「あの春」って言っても全然感じ出ないじゃん。「あの秋」とかもさあ、なんかただ単に秋でいいんじゃないの?って感じしない?。でも夏だけはついつい「あの夏」って言ってしまうし、そして「あの夏」って思い出すとなぜかプーンと夏の香りが頭の中にしてくる。
 
最近夏の香りがしなくなったと思っている20代以上の人、なんか昔のように燃えるものがないという30代40代のサラリーマン諸君、タイに行ってみるとすごく懐かしい夏の香りがしますよ。そして必ずあなたの頭の中に「あの夏」の感覚がよみがえって来ますよ、きっと。