TALK SHOW by Yuhi Komiyama

そんなこんな

先日、モデルとしてある撮影に参加したんですが、自分で言うのもなんですが妙にそこの現場のスタッフから褒められたんですよ。

「場が和んだ」とか「今回のイメージにピッタリです!」」とか現場でやけに嬉しいことを言われた上に、撮影後も「すごく好評です!」とか連絡あったりして。
とにかく「僕ってモデルに向いてんじゃん?」と勘違いしてしまうほど皆さんからお褒めを頂いたのです。

一体なぜ、ここまで僕が褒められたのか?

よくよく考えてみると、この日の撮影って結構ハードだったんですよ。
夜中3時に集合で、そこから撮影場所まで移動だけでも車で片道2時間以上。
僕に至っては、現場に着いてから自分の撮影が始まるまでの待ち時間が、なんと10時間!!
野外の撮影にも関わらず、空も雨模様で、まあ現場的にかなり大変だった訳ですよ。

そんな中で、僕はといえば、いつもの自分が仕切らなくちゃいけない音楽の現場に比べて、モデルでの参加っていうのは撮影されるのを待ってるだけですから、むしろリラックスしてスタッフと談笑したり、他のモデルの人と色々話したり、10時間以上待たされてる事を逆にギャグにして監督に文句言ってみたり、まあ楽しくやってた訳ですね。

自分で言うのもなんですが、要は意外とその撮影現場においてムードメーカーになってたみたいなんですね。

で、そう考えてみると、やたらと関係者から褒められたのも、思えばモデルとして評価された訳でもなんでもなく、そんなこんなも含めて現場的に助かりましたと。

そういうことだったんだろうなと。

べつに僕がモデルとしてすごいオーラを発してた訳でも、最高の笑顔をしてた訳でも、セックスアピールむんむんのポーズを決めてた訳でもなんでもなかったのです。

危うく「俺、ミュージシャンよりモデルの方が向いてるかも!」なんて勘違いするところでしたが、どうやらそういうことではなかったと。

思えばですね、こういうことって多々ありますよね。

「そんなこんなも含めて」の評価。

例えばミュージシャンという仕事も、結局「そんなこんなも含めて」の評価な訳ですよ。
単に曲が良いとか、歌唱力とか演奏力とか、それだけじゃなく、その人のパーソナリティとかね、スタッフとの関係とか、ユーモアのセンスとか、それこそギャラの額とか、そんなこんなも含めての評価であると。

そこを勘違いしちゃうとダメですよね。

そういうの全部含めての評価なのに、ついつい単に自分が歌がうまいからとか、喋りがうまいからとか、かっこいいからとか、そういう風に思ってしまう。

極端な話、はたからしてみると
「あの人は演奏は下手だけど、時間だけはちゃんと守るから」
なんて理由で使われてるミュージシャンだっていると思うんですよ。

それを勘違いして
「俺は人気があるから、多少遅刻しても大丈夫だ」
なんて思ってしまったら
「おいおい!キミの一番の長所は遅刻しないことだったんだよ!」ってなっちゃうわけです。

あるいは会社員で
仕事がウハウハなのをいいことに、ついつい、いい気になって独立した瞬間に
「おいおい!キミの評価は、あの会社にいたからなんだよ!」てなことになってしまう。

もしあなたが誰かからすごく良い評価を受けてるとしたら、それはとても良いことです。
しかし、その評価は一体なぜなのか?をしっかり考えてみて下さい。

あなたの「そんなこんなも含めて」みんなは評価してるんですよ、きっと。

<2014年のあとがき>
この文章に出てくるモデルの仕事というは、2006年のGUの広告で、ブログでもこのように書いてるものです。
なんか、これ読むだけでもすごく時代を感じますね。
そしてGUの初代モデルが僕やカヒミカリイさんだったというのも面白い。
それにしてもあれ以降、僕がモデルとして大成したとかないですからね、やっぱり「そんなこんなも含めて」の評価だったんですよ、ああ勘違いしてモデルになったりしなくてよかった。