TALK SHOW by Yuhi Komiyama

トークショー再開のお知らせ<その2>

僕がワタナベイビーと知り合った頃、ワタナベくんは沢山のデモ楽曲を持っていて、それこそ120分テープにぎっしりと、すでに完成された楽曲が詰まっていました。
さらに毎週のように「こんなの作ってみた」と新曲の入った新しいデモテープを持ってきてくれました。
それらはデモといっても、すでに歌詞やアレンジも完璧にできているし、鼻歌を録音したようなデモとは違い演奏も全て入っていて、言うならば完成した楽曲でした。
しかもデモテープにはたいてい数曲が入ってて、どれもシングルかミニアルバムのような形になっていました。

<スマイル>や<遠距離恋愛は続く><サガラミドリさん>など初期のワタナベくんの曲は、ほとんどこういうデモテープに入ってたものです。
想像してみてください「今週はこんなの作ってきた」と言って渡されるテープに<スマイル><遠距離恋愛は続く><約束するよ>とかの超名曲がずらりと入ってるのです。
それはもう衝撃的でした。

それらのすごいテープを聴いて、それまでなにごとも完成しなかった僕が
「僕もちゃんと人に聴かせれるようにしっかり曲を完成させないと・・」
と思い、初めて詞をちゃんと付けて楽曲として完成させたのが、後にCDとしても発売されることになるデモテープ『ユウヒビール』なんです。

ユウヒビールは僕が初めてちゃんと作詞した作品であり、初めてちゃんと完成した作品だったんです。

つまり、僕にとってのホフディランおよびユウヒーズというのは、常に未完成だった自分を完成させてくれる場だったのです。
そしてそのきっかけをくれたのが誰でもないワタナベイビーだったんです。

もしワタナベくんと会わなかったら、おそらく完成しない沢山の曲やら絵やら文章やらを抱えて、世に何一つ出すこともなく終わっていたかもしれません。

だから、ちょっと変な言い方ですが僕にとってはホフディランというのは今でも「完成」と同義語なんですよね。
ホフディランを続けることで唯一世の中に完成した何かを出すことができて、それによってわずかかもしれませんが他人に何かの影響を与えることができる。

話はちょっとそれますが、ここがもしかしたらワタナベくんと僕とでホフディランに対してちょっと違う部分かもしれません。
ワタナベくんはすでに沢山の曲が完成してたわけですから、ホフディランというのは完成の場ではなく、発表の場だったと思うんですよ元々。
ワタナベくんにとってホフディランはそれまでの自分を世に発表する場であるのに対して、僕はホフディランというものでなにか新たに作る=完成させようとしてる。
ライブでもワタナベくんはそれまでの自分をその場で出すことに重点を置いてると思うんだけど、どちらかというと僕はライブをやりながら今まさにライブを作ってるという感覚でいる。だからワタナベくんにとって一番の瞬間はおそらくライブ中だと思うんですよ、発表してるわけだから。でも僕はライブ中は作ってる時間なので、ライブが終わって楽屋に戻って「今日はいいライブが完成した」って思える時が一番の瞬間。
自分でいうのもなんですが、ホフのライブが面白いのは(面白いよね?)、その2つの構造があるからじゃないかなと。

話は戻ってTALK SHOW。

そんなわけで、最後まで行き着かないことの多い僕らしく、書いたけど発表しなかったTALK SHOWの数々が最近昔のパソコンとかから発掘されたので、それらを今更ながら発表しつつ、これを機にTALK SHOWを復活してみようと思ったのです!

発表されてなかった昔の文章を今読んでみるとものすごく面白いです。世に出てればね、なんらかの反響があるからそこである種の着地点ができるわけですが、世に出てない文章というのは着地点もないまま全く別の地点に落とされるようなものです。

予言を、その時期が終わってから初めて読むようなもんです。
1999年地球が滅亡するっていう予言だって、1999年より前だから意味があったし、たとえ外れてもその前に着地点があったからこそ現象として振り返ることができるわけですよね、こんな予言もあったよなー、みんなこんな風に反応してたよなーって。
でも、世に出ることもなかった予言書がもし出てきて、そこに「1999年地球は滅亡します」って書いてあったら、なんかどう捉えていいかわからないでしょ。外れたからどうとかって思いもそこにはないからさ。
もしなにか予言が当たってたとしたってですよ、すごいなとは思いますが、でも現状では誰もが知ってることなんだから、まあそうですね・・・としか反応しようがない。

そんなわけで、今読むとちょっと不思議な感覚になる過去の文章に、今の僕のあとがきを添えて、発表したいと思います。
それでやっと、彼ら(文章)にちゃんと着地点を作ってあげることができるかと。

そんな訳で、過去から蘇った言葉とこれからの言葉たちで、TALKSHOW 復活です。